(問題提起)
「相続とは、亡くなった人の財産を家族などの相続人が受け継ぐこと」と定義されます。現在、多くの国民の相続に関する関心事は、財産分割の行方と相続税に向けられています。その結果として遺産分割協議が整わず、長期間にわたる調停・審判等による遺産分割(争族)が増加している事実は周知のとおりです。
相続人同士の争いは、これまでの良好な「感情的係わり合い」を憎しみに変化させ、兄弟姉妹が絶縁状態になる等の不幸を招きます。そして国民生活を支える基礎集団である「家族」*の幸福追求する力の低下を招くという結果を憂います。
このたびの東日本大震災は、日本人が戦後の経済至上主義のなかで、不合理として捨て続けてきたものが、実は人間が生きていくうえで、不可欠であったことを示唆していることは、既に多くの指摘がなされているところです。
この機会に、相続に関係を持つ専門家の知恵を結集し、円満かつ円滑な相続のあり方について研究し、その成果を国民に公開することが必要ではないでしょうか。

(志)
日本相続学会は、「円満かつ円滑な相続」を目標とし、①相続学という学問領域を確立すること ②会員が地域で連携すること ③会員が情報交換と研鑽を重ねること ④研究成果等の情報を広く社会に公開すること ⑤適時、政府に対して政策提言を行うこと 等の課題に取り組まなければならないと思います。
本学会は、円満かつ円滑な相続が広く普及し、国民の幸福な生活に資することを目的として、相続に関連を持つ様々な実務家・関係者・研究者の参加を得て設立されるものです。
本学会の設立趣旨に賛同し、ともに円満な相続の実践と研究に情熱を傾けようとする皆様の参加を心から呼びかけます。国民の期待に積極的に応え、今こそ21世紀の日本社会の課題に立ち向かおうではありませんか。

2012年11月

呼びかけ人

伊藤久夫(FP・相続アドバイザー)池畑芳子(税理士)
吉田修平(弁護士)宮田浩志(司法書士)
平川 茂(税理士)中尾徳彦(家裁調停委員)
内藤 雄(相続アドバイザー)榊原正則(保険専門紙役員)
中島 誠(司法書士)佐藤健一(税理士)
酒井利直(元信託銀行役員)芳賀則人(不動産鑑定士)
矢田尚子(大学准教授)金子 充(経営コンサルタント)
平川忠雄(顧問:日本税務会計学会会長) <順不同>

*家族の定義:「家族とは、夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な構成員とし、成員相互の深い感情的係わりあいで結ばれた、幸福(Well-being)追及の集団である。」(森岡清美・望月崇編『新しい家族社会学』四訂版 培風館, 1997)